2026/04/05

医院の経営危機脱出、私のやり方


医院というのは保険の点数でお金が入るので、収入を伸ばすのは難しい。
特に家庭医は、手術などでガバッと稼げないので、ちまちま地道にやるしかない。どれ位ちまちまかと言うと、小さな検査ではセント単位、大きな検査でも大体二桁ユーロ。平均すると、患者さん一人あたり、四半期(3か月)分で100ユーロいくかいかないか位。そこから更に税金や経費を支払う訳で、実際の収入として残るのは、その3分の1程度と言われている。
(今は円安なので、円に換算するとそれでも多く感じるかも知れないけれど、こちらの物価の感覚では、100ユーロが1万円位。
今時、ランチでも20ユーロ位したりするし、ガソリンは1リットル2.20ユーロ前後。先日乾燥機の出張修理を頼んだら、269ユーロだった・・・かかった時間が違うとは言え、単価としては私の往診や死体検案よりも高い。)

収入を伸ばすためにやりがちなのが、診療時間を増やしたり、患者さん一人あたりの時間を短くしたりして、診る患者数を増やすこと。
でもね、それって最終的には自分で自分の首を絞める事になるし、そんなベルトコンベアーみたいな医療がやりたくて開業した訳じゃない。
あと、仮にどんなに詰め込んだとしても、伸ばすには「頭打ち」があって、診療報酬カットされてしまうので、ただ働きの働き損になる。

また、医者も雇って医院を大規模にする方が「儲かる」と言われているけれど、それをすると出入りするお金も桁違いになり、「常に回していく」プレッシャーが恐ろしい事になるし、家庭医というのは小ぢんまりと、全てに目が行き届いている状態がいいと私は思う。

自分がやりたい医療は譲れない。
そして、私がやりたい医療は儲からない。

そんな中で、巨額のマイナスを背負い、崖っぷちもいいとこ、本当に生きた心地がせずに胃がでんぐり返る気持ちで無我夢中でやってきたけれど、何とか抜けてきたのかなあと、最近やっと思えるようになった。

私がやって正解だった!と思うのは・・・

①出稼ぎ(当番医バイト
自分の休みを潰して、なので体と相談しながらだけれど、医院のシステムを変えず、またスタッフにも負担をかけず、手っ取り早く臨時収入をつくる事ができて、不要になればやめられて、これは我ながら本当に名案だった。
但し、当番医バイトの時給は、私が当番医を始めた約十年前と全く同じ。十年以上賃上げなしって、あり得ん、なめとんか、という世界。
経済的に回るようになってきたみたいだし、当番医システムの改悪があったので、そろそろ割り当てられた分だけの必要最小限に戻すつもり。

②ワンオペ
スタッフを使うと支出も増える訳だし、スタッフの時給を考えると「時間あたりに稼がなくてはならない最低金額」が上がってしまう。それに、診療時間を公に広げてしまうと、それをまた小さく戻す事はまず無理。なので、飴ちゃん以外でも、収まらない分は私一人で時間外に対応。
そもそも、スタッフに依存せずに自力で回せるようにしておくのって、最強。

③「みんなで我慢」はさせない
苦しい時に「みんなで力を合わせて」というのは、経営者の勝手。そんなの、被雇用者の知ったこっちゃないよね。
スタッフに皺寄せがいくと、不満が溜まってチームの雰囲気も悪くなるし、辞めていく人も出て、そうなると残された人の負担も大きくなり、もうお手上げになってしまう。
いいスタッフは、お金で買えない宝物。
なので、どんなに、どんなに苦しくても、それは自分だけで背負う。
備品は無駄にしないようにケチケチしても、スタッフにはケチケチしない。

④月給額より待遇やボーナスで努力
月給って、昇給した時には喜ばれても、すぐにそれが当たり前の普通になってしまう。そして月給を上げると、ボーナスの通常額も自動的に上がってしまう。それらが地味に圧迫してくる割に、「上がった感」が消えてしまうというのは勿体ないし、ボーナスは飽くまでも私の自由意志にしておきたい。
月に100ユーロ多く貰うよりは、ボーナスで1200ユーロ多く貰う方が「凄い!」となる気がするので、月給自体は普通のタリフ(ほぼ毎年賃上げがある)にちょっと上乗せ程度で、でも労働時間をマイナスにして実質の時給を上げたり、ボーナスを頑張る(これをするとボーナス前も生きた心地がしないのだけれど、そこは踏ん張る)、という方向で努力。
そしてボーナスを奮発する時には、「今年のあなたのこういう部分が素晴らしかったので、お礼の気持ち」という事を伝えて明細を渡す。

* * * * *

経営のやり方なんて、十人十色で「これが正解」なんてものはないので、結局は自分が「これ」と思うやり方で行くしかないのだけれど、もしかしたら誰かのヒントになるかなーと思って書いてみた。

あと、お金の話しからはちょっとずれるけれど・・・
スタッフの不満に反論はしないように心がけている。たとえそれが事実と違ったり理不尽なものでも、そういう気持ちになってしまった事自体が問題なので、一旦受け止めて、解決策を考える。
私がスタッフに改善して欲しいと思う点は、口に出す前に「気を付けて貰って、よくなるメリット」と「そこにスタッフのキャパを使ってしまい、スタッフの気持ちも下げるデメリット」をよく考え、「そんなの些事」と思えばやめておく。
人間にはキャパがあり、全てに気を付けるなんて所詮無理だし、雇用主というのは絶対的な強者なので言葉が即命令になってしまう重さがある。なので、優先順位をよくよく考える。

経営者になると、今迄の人生でしてきた寄り道が、凄く役に立っているのを感じる。社会や企業の底辺部分の仕事とか、営業(商売)とか、社内での色んな人間関係とか。
ボスの独りよがりな笑い話しが全然笑えなかったり、ボスの言動にさっと冷めて見限ったりした、昔の自分の不満や苦しさを忘れず、スタッフを当時の私と同じ気持ちにさせないよう、ガンバロウ。




疲れた時や頑張った時の、自分へのご褒美。オレンジクリームを挟んだウェハスをビターチョコでくるんであるの。冷蔵庫で冷やして食べると凄くおいしくて、一個でも大満足。

定価は高いけれど、時々セールになる。私は糖質制限があるので一度に一個しか食べられないし、毎日食べる訳ではないので、セールで一袋買うので丁度いい。



5 件のコメント:

  1. 返信
    1. あら、コメントがおかしなことに。こちらに書き直しますね。

      くまさんのような信念の方のところで働きたかった。切実にそう思います。くまさんのような経営者や医師と出会うのは奇跡のようなもの。スタッフさんは幸せだー。

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    2. Chikaさん、こんにちは。
      幾ら信念があっても、経済的に回していけなかったら経営者としては失格で、その本っ当にギリギリ崖っぷちにいたのが何とも情けなかったです。
      そして、被雇用者にとっては、「回していけて当たり前」なので、誰も褒めてくれないし・・・。
      なので、Chikaさんのお言葉が、凄ーく身にしみて嬉しいです。有難うございます!

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  2. 始めまして。
    偶然、どこかのブログで引用されていたビールとパンのお漬物の旧ブログ記事へ流れつきまして、いくつか記事を読んでいる間にこちらじぇ辿り着きました。
    初コメントさせていただきます。

    全部読んだわけではないのですが、本当に色々試行錯誤や経験をされて、信念を持って頑張っていらっしゃる方なのだなとつくづく尊敬しました。

    私は8年前に(合わなそうと言う周りの意見を無視して)ドイツに移住したのですが、案の定心底自分の性と合わないまま居続け、メンタルを壊して4年後にスペインへ逃げるように再度引っ越した者です。
    夫は(出生は違えど)ドイツ国籍を持っているので、私にとってネガティブな気持ちになってしまう国ですが、今でも切っても切れない縁がある国です。(友人を訪ねにMannheim近郊やHerrenberg近郊へ旅行へ行ったこともありますが正直南西の小さな町々は穏やかで優しい人が断然多い印象はありました)

    ドイツで家庭医を開業するというのはドイツの人でも本当に大変なんだろうと思います。私はコロコロと家庭医を4回くらい変えてようやく書類を書くだけではない親身になってくれる先生に会えました。

    それを成し遂げ、信念を持って日々闘っているくまさんは本当にかっこいいです。
    これからも頑張って下さい。
    というのをお伝えしたくてコメントしました。

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    1. とうふさん、はじめまして。
      わざわざ声を掛けて下さって、有難うございます!嬉しいです。
      同じドイツ国内でも地域差が大きいので、「合う・合わない」は凄くあると思います。私が住んでいる所も、地方としては保守的なので知られていますが、ここだけぽこっとオープンです。
      合わないところで暮らすのは、本当にしんどいですよね。メンタルを壊すまでって、一体どんな目に遭われたのか、想像すると心が痛みます。
      ドイツも色々なので、今後の人生でドイツにいらっしゃる際に、ポジティブな経験をされるといいなと願っています。

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