2026/10/10

疲労困憊


精神的な問題。
病人を支えている家族の悩み。
どこの専門医に行っても「異常なし」の苦しみ。
リビング・ウィルの作成。
複雑な病歴のある新規患者。

そういう相談は簡単に終わらせる訳にはいかず、診療時間後に延長して話したり、更に患者さんが帰った後も自分で色々と調べたり。
なので、それが連日になると、流石に大変。

夜中までかかって仕事を片付け、もう濡れた髪を乾かす力もなく、ベッドに倒れ込んで、多分秒単位で寝付いた。

それでも昼休みには大急ぎで、妹こぐまの晩御飯としてクリームシチューを作っておいたの、倒れ込む前に「妹こぐま、お鍋ごと持ち去って、空っぽにしていたよ」と聞いて、嬉しい充実感。

* * * * *

さて、何故、時間外延長してやるかと言うと・・・

公的保険医療では、そういう長い相談に対して特別に支払われる報酬というものが、ないに等しい。建前上は一応あるのだけれど、患者数に対する上限が厳しくて、大半は請求できないし、たとえ請求できたとしても、たったの16.31ユーロ。20分以上かけての心療内科相談でも、24.60ユーロ。
そこから税金や経費を引いて、手取りは3分の1位と言われているので、残るのは雀の涙。

プライベート保険であっても、存在するのは10分、心理カウンセリングみたいなものでも20分で20.11ユーロまで。
それ以上の長さは、ファクターを上げて調整するのだけれど、それも上限があるので大した事はない。どれ位大した事がないかと言うと、ファクターを最大限まで(!)上げても、30.60ユーロとか、条件が揃えばごくたまーに61.20ユーロとか。しつこいようだけれど、手取りじゃないよ。

複雑な患者さんだと、1時間位かかる事もままあって、その金額。
スタッフがいる時間帯というのは、スタッフの時給が必要になるので、それでは赤字になってしまう。

それでも時間を取って丁寧に説明してくれる専門医もいるけれど、無理でもそりゃまあ仕方ないよね、と思わざるを得ない。医院を潰さないためには、そっちが普通だし、その時間を使ってより多くの患者さんを診てくれる方が、こちらとしても有難い。

それで、時間を取って向き合うのは、家庭医の仕事になる訳。でも、家庭医だって、医院を潰す訳にはいかない。
なので私は、時間がかかりそうな相談は、最初から診療時間後にかかるように予約を入れる。私一人なら、赤字にはならないもの。儲けがないだけなら、まあボランティアだと思えばいい。

但し、それは私の時間とエネルギーを奪う事。
医療の底辺は、そういう医者の善意に支えられている部分があって、それを当然の前提にされたり、先日のメルツ首相のように更に貶めてきたりされると、かなり堪える。

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最近私に元気をくれたもの:





少し前の虹と「アテネの朝」。




妹こぐまが焼いてくれたクッキー。




四半期締め日の御飯。揚げたてのカツ。
(デザートやサラダを付けず、ランチ二人分で40ユーロ強。今のこちらの物価はそれ位です。)



2026/10/06

Es ist Punkt 12! デモに参加



日曜日は妹こぐまを連れて、デモに参加してきました。
医療福祉費削減反対のデモ。主催者は、首相と討論した小児科医。
削減されて一番割を食うのは、子ども(胎児も含め)達をはじめとする、社会の弱者たち。その多くは、自分で声を上げる事すらできない。だから、代わりに私達が「ノー」を叫ぶのだ。




デモの前に友人と会って、腹ごしらえ。



鳴り物も色々用意した。足に着ける鈴は置いて行ったのだけれど、やっぱり持って行けばよかった。
中2になった妹こぐまに、初のデモ参加を楽しんで欲しくて、ピクニックシートやおやつも持参。天気予報が怪しかったので、上着や雨具も用意したけれど、降らなかったし、暑くも寒くもない、とても気持ちのよい日だった。

私のTシャツは大人気で、一体何人の人に写真をお願いされたことか。わざわざ声を掛けて誉めてくれた人もいっぱい。
ちょっと高かったけれど、両面プリント注文して、よかった!




Stuttgarter Zeitungによると、約2500人が参加したらしい。やったね!




子ども連れや車椅子もいっぱい。




デモと言っても、愛がいっぱいで、周りの人達との連帯感もあって、凄く楽しかった!




妹こぐまも、私の友人と将来の話しをしたり、このデモの内容も聞いて、色々と考えたんじゃないかな。

投票も然り、一人の力は小さくても、皆の力を合わせれば大きくなる。逆に、「私一人くらい、行かなくても」と皆が思ったら、何も変わらない。
どんなに小さくてもゼロじゃないというのが大事なんだと、感じて欲しかった。




動画も撮りました。熱気が伝わるかしら。




抗議運動のテーマソング

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帰りの電車の中で、「乗客に医師か救急隊員の方がおられましたら・・・」のアナウンスが、きた。
まあ、大した事はなくて、よかったのだけれど、それでまた考えさせられた。

私達医師は、プライベートな時間であっても、どんなに急いでいる時でも、救助の義務があって、それは全くの無償。
たとえ空港に向かって急いで走っている時でも、事故を見かけたら、車を停めて怪我人の救助をしないといけない。それで飛行機に乗り遅れたとしても、誰も弁償してくれない。

それでも、「助ける事ができる」私達が助けるのは当然の事だと思っていて、コロナ禍の時もその思いで我が身を削って尽力した、そういう私達に対してあの言葉かよ・・・と、改めて。



2026/10/01

怒髪天を衝く・デモでお会いしましょう


ドイツでは最近、医療制度を節減する政策が可決された。
一般市民との討論会で、それを厳しく批判した医者に向かって、メルツ首相が言った。
「あなた達医者も、医療制度のNutznießerなのだ」
("Und da sind Sie als Teil des Gesundheitssystems auch Nutznießer. Sie als Ärztin")



(↑その箇所から始まります)

この「Nutznießer」という言葉、字面で「Nutzen」+「Nießen」から想像するよりも、ずっとずっと酷い意味。

小学館独和大辞典による和訳は:
「受益者、うまい汁を吸う者」

DUDENによると同義語は、なんと:
「Schmarotzer(寄食者、居候、食客)」
「Parasit(寄生生物)」
「Abstauber(いかがわしいやり方で他人に生活費の面倒をみてもらって暮している人)」
つまり、労働の対価ではなく、ただ受益している人という意味の言葉。

そもそも私達開業医は、自分で医院を建てて機器なども買ってローンを背負い、人も雇って経営しているのに、収入は自分で決められない。物価上昇で経費が膨らんでも、「このままでは倒産するから値上げ」とかできないし、たとえ仕事を増やしたとしても、稼ぎはカットされて自由に増やせない。既にやった仕事であっても、予告もなく勝手に支払いカットされたりもする、酷い扱い。
そんな私達に、一国の首相が、この言葉を使うか。
しかも討論に出た医者は、自分の懐のためではなく、その節減によって苦しくなる患者さん達のために、批判したのだ。

思い出す度に怒りで寝付けなくなる位、めっちゃ頭にきた。

ほんの数年前、コロナ禍中、我が身を削って尽力していた医療従事者への感謝の気持ちの表現として、晩の決まった時刻に、皆がバルコニーに出て、拍手をした。
それが、喉元過ぎれば、これかよ。

* * * * *
 
10月4日(日)13-16時、シュトゥットガルトのSchlossplatzにて、デモがあります。

フェスティバルみたいなノリで、音楽など出し物もある予定なので、家族連れも大歓迎。



フェイスブックですが、ログインしなくても見られます(ログイン画面を「x」で閉じる)。削減の内容の、隠された部分について、とても解り易く書かれています。

医療関係者じゃなくても、この節減に反対の方、私に会ってみたい方は、気軽に覗いてみて下さい。




怒りの余り、Tシャツをプリント注文しちゃった。
そのお金で素敵なTシャツを買う方がいいというのは解っているけれど、いや、これ、黙っちゃおれんやろ!
ついでに鳴り物も用意。

私を見つけたら、是非声を掛けてね!