2024/02/04

家庭医の孤独



家庭医の仕事は、凄く面白い。

でも思っていたより重くのしかかるのが、死の部分。特に予期せぬタイミングでの死だった場合は、何かサインを見逃したのではないかとカルテを遡り、自分に何かできなかったのかと、どうしてもぐるぐる考えてしまう。
また、一家まとめて診ている場合は、看取りでおしまいではなく、家族の「その後」のケアが、かなり長く続く。

病院なら同僚とお喋りして解決できるけれど、家庭医は孤独。守秘義務があるので誰にも吐き出す訳にいかず、何もかも私一人で飲み込んでいくしかなくて、家族に心配されても話せず、村人との世間話しでも情報を出さぬように気を遣い、体の中に鉛のような澱が溜まっていく感じ。
絶対的な正解というもののない世界なので、「これでよかったのか」という自問自答は常にあり、事あるごとに澱がまた表面に浮かび上がってくる。
医者と患者というのは一方的な関係と思われがちだけれど、医者も患者から影響を受けてしまう部分があるので、精神科などでは「スーパービジョン」と言って、医者が問題症例を相談して自分の精神衛生を保つシステムもある位。

それで家庭医にとって貴重な相談の機会となるのが、勉強会。
大きな事なら発言して症例報告させて貰う。小さな相談や情報交換には休憩時間のお喋りが凄く大事で、だから自己紹介もすっ飛ばし飲食そっちのけで話し込んでいるグループがあちこちに出現する。

土曜日は丸一日緩和ケアの勉強会だった。緩和ケア、腫瘍科の先生の講演をそれぞれ聞き、臨床心理士も加えて症例を検討。毎年行われているのだけれど、私は去年は試しに他所に行ってみたので、2年ぶり。
参加者の大半は開業家庭医。二十数名位で輪になって座り、発言もいっぱい。緩和ケアに興味のある人達なので、基本的に皆さん真摯で、家庭医という仕事を愛しているのが伝わってきた。

講演も素晴らしかったし、「症例ある人~」のところで手を挙げて紹介させて貰い、色々な観点の意見をバンバン聞けて、心の澱がかなり昇華された感じ。
そして私も一つ、参加者の多くが知らなかった情報を提供する事ができて、少しでも役に立てて嬉しかった。

充実し過ぎで、帰宅したらヘロヘロの疲労困憊。お風呂に入ってあたたまり、珍しく湯たんぽを抱えてすぐベッドへ。はあー、でももう既に、来年の勉強会が楽しみやわ♪




10 件のコメント:

  1. さとみ4/2/24 23:09

    はじめまして、日本に住んでいます、タラ肝油のことを調べていたらたまたまこちらのブログに辿り着き、海外でのお話が面白く読むに至ります。昨年子供が生まれ、発酵タラ肝油(液体)につき、安全で効果のあるものを調べているのですが、iherbで買えるものは発酵でないのばかり、日本からなかなか【発酵】タラ肝油が買えません。先生は発酵のものがやはりいいと思いますか?発酵タラ肝油の通販で買えるオススメ品はありますでしょうか、もしくは、海外からの配送などして頂くなど難しいでしょうか。

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    1. さとみさん、はじめまして。
      私自身は今迄に3、4種類試しましたが、はっきり効果を感じたのは発酵タラ肝油だけだったので、今もこれを飲んでいます。
      お薦め品はこちらです。何年も前に日本でも入手できるようになったところまでが私の知っている情報です。
      https://germanmed.exblog.jp/22957967/

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    2. 返信ありがとうございます、また、オススメを教えて頂きありがたいです。Amazonで買えるのですね、野菜ジュースも含め、子供と早速試してみたいと思います。

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    3. おお、今はAmazonでも扱っていますか。便利になりましたねえ。是非また、効果の程をお知らせ下さい!

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  2. お医者さんとは、改めて精神的にも来る、お仕事ですね。
    尊敬するなぁ。患者さんを診ている先生も具合悪くなりそうだなと思いました。
    精神的なコントロールも大変だよね!良くやっているね!

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    1. mさん、こんにちは。
      そうですね。病気とか死とかを前にしたら平静でいられないのが普通で、そこに寄り添って伴走するような仕事ですから、色々難しさはありますね。

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  3. ひかり5/2/24 07:53

    少々ほっとしました。
    守秘義務があるが故重さを一人で抱えるのはつらいなー
    と読みながら思いましたが、勉強会があってよかった。
    お互い助け合い、高め合い、ですね~
    お疲れ様!

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    1. ひかりさん、こんにちは。
      そう、勉強会で色んな人の意見やアイデアを聞くと、視野が広がるので、とってもいいんです。
      なので、見栄とか恥とか捨てて、どんどん質問したり発言したり。有難いです。

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  4. 日本でも勉強会に参加される家庭医の先生は多いのかなあ。よく大きな病院では担当医は学会に出席の為何日は休診です。とか出ていますが。くまさんは自分のお休みを潰しての参加ですよね。
    でもそれがとても役に立っているので安心しましたー村人との会話で気を使うのも、家庭内でうっかり話もできないと言うのも精神的に結構辛いです。私も守秘義務のある仕事についていたことがあるのですが企業での事なのでそこまでしんどくはなかったです。生命は預かっていなかったので比較にはならないですが。

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    1. cocoさん、こんにちは。
      ドイツでは専門医になると、一定数の勉強会に参加する事が義務付けられていて、その度に休診にしなくてもいいよう、週末や晩に行われる事が多いです。
      実際には、興味のある勉強会に参加していると、あっと言う間に義務分は満たしてしまって、余剰ザクザクという感じになります。

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