2026/10/25

ドイツの医者に必要な「話す力」


随分前に書いたまま、出さずに忘れていた記事を発見。

* * * * *

よその国、特にEU外で医学を修めてからドイツで口述試験や面接を受ける場合は、誰か経験者に訓練して貰う事を、絶対にお薦めする。
あとは、ぬいぐるみ相手とかでもいいので、説明の自主練習。

外国では、認可されている薬もその用量も医療福祉体制も違ったりするので、外国からの資格書き換えの試験では、知識に関してもかなり厳しく見られるのは仕方がない。
更に、仕事させて貰えるとなれば、少なくとも本国人と同じように使えなければならない訳で、つまり議論とかになってもやり合える、少なくとも自分の考えの根拠を同僚や上司にきちんと説明できたり、患者さんに解りやすく嚙み砕いて説明できたり、という言語能力があるかどうかも大切。医者という職業上、信頼できる関係を築くためのコミュニケーション能力は、とても重視されるのだ。
特に専門医ともなれば、自分で開業したり、上級医になったりもできる訳で、責任が重くなる分、それを背負ってチームを率いていく知識とコミュニケーション能力が必要になる。

余談になるけれど、人手不足以外の理由で就労ビザを得るという事は、基本的に「本国人では補えない能力があって、だからわざわざ外国人のあなたを雇いたい」という根拠、つまり本国人以上の能力が必要。
しかもドイツでは、日本の初期研修に当たる部分は在学中に大体済ませているので、就職した初日から病棟を任せられる事が求められる。給料を貰うとは、そういう事。

ドイツの医学部では、兎に角口述試験が多い。毎週のようにある月もあった。
試験官は容赦なく問い詰めてくるし、勿論何度でも落としまくられる。
化学実験中に、学生の肩を後ろからツンツンとやって連れ出しては試問する教授とか、口述試験中に必死に答えを述べるのをじーっと訊いていて、一言「それ、確かかね?」と言って、焦って自爆させる教授とか、色々いたわ。
ドイツ人にとっても厳しい試練で、初めての口述試験では、待ち時間に緊張の余り泣き出してしまう子も続出だったのが、6年もそれが続けば、流石に皆鍛えられてくる。

医者になればなったで、先輩医師のマシンガントークについていかなくてはならず、新人はブルブル緊張しながら口を挟む隙を探し、隙間を空けるとまた他の人に口を挟まれるし、話し方が要領を得なければ時間のない相手に苛々されるので、筋道を立てて要点だけ一気にまくしたてる。
そうやって鍛えられたのが、ドイツの医者の普通のレベルなので、ドイツの試験官はそういう基準で見ている。

私は一度だけ、口述試験で落とされた事がある。2年生の時で、「よく勉強してあるけれど、言葉のうえで、それでは国家試験に通用しない」という理由で。
その時は凄く憤慨したし、ドイツ人同級生たちも大騒ぎしてくれたけれど、今になると、やっぱりその先生は正しかったのだと思う。
2年生になってちょっと試験慣れしてきて、「外国人にしてはよくやっている」と見せる妙な誤魔化し方が、きっと無意識のうちに入ってきていたのだろう。そういう甘えや狡さのようなものがちらりとでも見えたら、もう許されないと思った方がいい。

あと、医者に限らず、自分の話している様子をビデオに撮って観察するのはとても大事。私は医学部後半に、一般留学生向けのプレゼンテーション講座に通った事があり、自分のプレゼンテーションの録画に愕然とした。
日本人の自動的な営業スマイルは、場合によっては全くそぐわない。へらへらして不真面目に見えるのだ。特に失敗した時の照れ笑いは絶対にいけない。真剣な話しをしている時は、真剣な顔を。これ、もう、ガツーンと身に染みた。

口述試験にもテクニックがある。
口述試験というのは、「時間内にどれだけ自分の知識を披露したか」「どれだけ試験官を納得させられるか」で勝敗が決まるので、訊かれた事に答えるだけではなく、求められている答え以上に話す。つまり「はい、もう結構」と試験官が遮ってくるまで、なるべく早口で答えを詰め込む。
ぽつんと答えたのでは、物足りないので試験官は掘り下げてくるけれど、相手主導で細部を追求されていくのでは、自分の答えられない部分に当たるかも知れない。なので、訊かれた事以上に勝手に掘り下げ、「お、そんな事まで知ってるの?」と試験官が思ってくれる位、詳細に渡って喋りまくる。
特に一番最初は凄く大まかな質問で「小手調べ」が来るので、最大のチャンス。そこで如何に流暢に細部まで答え、自分の知識を披露するかで、その後の試験の流れが決まる事が多い。
例えば、「〇〇にはA、B、Cがあります」で終わるのではなく、「〇〇にはA、B、Cがあって、Aの中のA-1、A-2、A-3、A-4の違いはこうこうで、A-1の治療法は・・・」と、自分の得意な部分を勝手に語る。

緊張の余り答えが出てこなくなってしまった場合も、黙り込んでぐるぐる考えるのではなく、「〇〇はこういう理由で違うし、××はあっちだし・・・」と考えている内容の根拠を口に出していくと、ちゃっかり他の知識も披露できるし、試験官も納得してくれる。

また、究極の部分を言ってしまえば、正解というのは調べれば判る事なので、必ずしも全ての詳細を暗記できていなくても、医者としては構わない。
ただ、正解に辿り着くための過程や理由、考えの道筋とか、「ここは要注意」とか、そういうものはとても重要。

因みに、国家試験や専門医試験など、大きな口述試験は必ず複数の試験官に囲まれる。これは、口述試験というのはとても主観的なものになるので、一人の試験官と相性が合わなくても他の試験官との部分で救われたりするし、試験の後は試験官同士で話し合って評価を決めるようになっているのだ。




デュッセルドルフまで面接に行った時の写真。
当時はまだ医師不足じゃなかったので、新卒の就職活動はかなり苦戦した。

面接に関して経験者から貰ったアドバイスは、「いきなり本命を受けてはダメ。まず、どうでもいいところを受けなさい」という事。確かに、その通り!と思う。
あと、面接に行くための往復交通費は、面接先に請求する事ができるし、志望書のための写真や郵送費などの諸費用は、税金控除に使えるよ。


関連過去記事:
■「ドイツの医者に必要な『読む力』」(←筆記試験についてはこちら)


2026/10/23

Schlado


水曜日は往診当番。ドイツで水曜日というのはお昼迄のところが多いので、往診当番も夕方ではなく13時から始まる。

午前の診療が終わって、事務仕事は置いておいてすぐに台所に駆け上がり、晩御飯の仕度。肉と野菜の煮込みを作り、炊飯器に御飯をしかけておく。
義母が遊びに来ていて、普段なら私は寄り付かないのだけれど、「ぼく達は気にしないから」だとー。夫が義母と談笑している横でバタバタ作り、ちょっとムッとしてしまう、心の狭い私。

しかも兄こぐまの友達が前の晩に泊まったまま、学校をサボって一人で兄こぐまの部屋に居るのを発見(兄こぐまは学校に行った)。いや、それはあかんやろ! 

料理をやり遂げたと思ったら、兄こぐまから「30分以上待たないとバスがないから、迎えに来て」って、その往復で私が20分位失うんですけど・・・と思いつつ、雨もびしょびしょ降っていたし、迎えに行ってやる、甘々。
なのにお礼どころか、友達の件で「必ず事前にパパか私に訊いて」と言ったら逆切れされ。でもまあ、それに関しては義母も「それはあかん」と夫の肩を持ってくれたそうで(というか、常にこぐま達より夫ファーストな義母・・・爆)。

晩には地区の家庭医の勉強会もあって、行ったら途中でやっぱり出動の電話が入り、夜中まで。

晩に残った御飯は、おにぎりにしておいた。

翌木曜日、「あれに海苔を巻いておいてやろう」と思って台所に行ったら・・・もうなかったわ!(爆)

ドイツの木曜日は、晩もやっているところが多い。
うちの医院も晩の診療があって、その後時間外の鍼灸もして、20時半過ぎ。更にその後、事務仕事も。

晩の診療時間に寄ってくれた、元仕事仲間に、
木曜日の事、私達シュヴァーベン人が何て言うか知ってる?「Schlado」だよ。
と、教えて貰った。ええー、聞いた事ない!
なんと、「Scheixx langer Donnerstag(ク〇長い木曜日)」だってー。わはは。




差し入れに頂いたクロワッサン♪
さっと濡らしてオーブントースターで焼く(150℃で4-5分)と、焼きたての香りと食感が蘇り、サクサク・ふんわり・しっとりで、すんごくおいしい。




金曜日。さあこれで、明日から秋休み!

あちこちでサイトが一時閉鎖されていて、強制的にデジタルデトックス。傍観者としては、急に時間にゆとりができて、悪くない。
コロナ禍でも思ったのは、「禍を転じて福と為す」とはとても言えなくても、どんな酷い禍の中にも、ミニ福が隠れている事は、あるかも。



2026/10/21

今年も「冬が来る前に」



今年も村祭りの屠殺プレート。
私は血やレバーのソーセージは苦手なのだけれど、うちの村祭りのだけは、好き。
他にもおいしい物が沢山あるので、二日間とも行ってあれこれ食べるのを、毎年楽しみにしている。

現代っ子のこぐま達に、「屠殺というのは、秋の風物詩なんだよ」と教えたら、夫まで一緒に驚いていた・・・。
冷蔵庫がなかった時代の冬の貯蔵食作りでもあるし、夏の間に肥えた家畜を、餌が減る冬越えの前に屠殺するという季節のリズムでもあり。
(って、常識やないんか?! 夫曰く「ぼくが生まれた時には、もう冷蔵庫あったもん」・・・私もそうやけど!)




村の誰かが焼いたケーキ。キリッと酸っぱいリンゴの層が挟んであって、スポンジの上にはメレンゲ生地まで載っている、お手間入り。

* * * * *

この週末は、村祭りのお陰で料理しなくてもいいのが判っていたので、重い重い腰を上げて、最後の窓拭き。

夏休み中に全部終わらせる事ができなくて、2、3日分だけ残っていたのだけれど、夏休みの疲れがなかなか取れなくて、ずっと放置してあったの。
でも、もういい加減やらないと、冬になってしまう!
(日本の多くの地方ではピンとこないかも知れないけれど、こちらでは冬は寒過ぎて凍ってしまうので窓は拭けない。日も短く薄暗くなるので、そもそも大掃除も年末ではなくイースター。)

本当なら三日に分けてやりたい量だったのだけれど、二週末やるのは嫌だったので、ちょっと無理して土日で一気に終わらせた。



新しい網戸も張って、秋の花を植えて、疲れ果てたけれど気分爽快。



2026/10/18

オーブン料理始めました


暑い夏が過ぎて、オーブン料理が嬉しい季節になりました。



テラコッタの器に塊肉と野菜を入れて焼き、配膳前にスライス。

兄こぐまの歯の大きな矯正金具が外れたお祝い。戻ってしまわないよう、小さな金具とマウスピースはまだあるけれど、やっと一段落。始めてから3年半もかかった!




野菜のオーブン焼き。
最初にじゃが芋だけで焼き始め、あらかた火が通ったところで他の野菜やソーセージを加えて焼く。

こぐま達の新学年が始まり、高1と中2になりました。
(保護者会を忘れて、すっぽかしてしまった私・・・)
特に兄こぐまは段々と気難しい年頃になってきて、接触は食事のみに近く、殆ど喋ってくれない(泣)。
余りにも態度が悪いと、「もう、自分で作って食べなさい!」と言いたくなる時もあるけれど、それをやったら、本当に繋がりが切れてしまう。あと、兄こぐまは本当に大変な子ども時代を過ごしてきたので、溜め込んできたものを今やっと、安心して出せるようになったんだなと思うし、そもそも思春期の傍若無人ぶりは私も身に覚えがあって、責められる立場ではない(限度を超えた場合は、勿論それは言うけど)。
なので、どんなにしんどくても、御飯だけは作るようにしている。
今は妹こぐまの「おいしい!」が拠り所。妹こぐまがトゲトゲになる頃には、兄こぐまが戻ってきていて寄り添ってくれるといいな。



2026/10/14

撮ってみた、切り傷の処置


旧ブログの「どくとるくま式、家庭での切り傷の手当て法」は、皆さん検索で辿り着かれるのか、未だにアクセスの多い記事。

先日指を切ったので、ふと思いついて、実際に動画を撮ってみました。
片手で止血しながら、もう片手で三脚を立ててスマホをセットし・・・わはは。



病院に行くまでもないという切り傷の処置方法です。本物の傷で撮影していますので、0:48-0:50あたりは特に閲覧注意!
使っている粘着テープの説明は、最後にあります。テープは何でも構いませんが、防水でない、通気性のよいものにして下さい。

因みに、子どもにはこの方法は向かない事が多いです。
肌がつるつるで粘着テープのくっつきが弱いのと、「濡らさない」「なるべく動かさない」というのを守れない事が多いので。

また、このやり方は、清潔な切り傷だけにして下さい。
特に噛み傷は、どんなに小さくても菌が入っていますので、このやり方で手当てせず、病院に行って下さい。