偶然通りかかって、ベルリンの壁を見た。
この壁のせいで人生を壊された患者さんを担当した事がある。
壁を越えようとして両脚を撃ち抜かれ、監獄病院で適当に手術されたので脚が曲がったまま固まってしまった。
胸一面に、レーザーとかではなく肌を壊して刺青を消した傷跡。「ドイツ連邦共和国(旧西ドイツのこと)」と入れてあったのだという。それ程、西に行きたかった訳だけれど、消したにも理由がある訳で。
リハビリに来たけれど、恐怖症や不安症が酷くて「やっぱり無理」とすぐに中断して帰って行った。
彼にとって一番たまらないのは、壁があっさりなくなって、今はその存在を知らない人までいる事だと言っていた。(壁がなくなったのは勿論嬉しいのだけれど、自分が命懸けでやった行為、そのために一生引きずる事になった苦痛は、ただのやり損やったないか、というところ。)
空港のお土産物屋さんには、未だに壁の欠片が並んでいた。ちょっと欲しくなるような展示になっていたけれど、彼を知った私には重過ぎて。
今、どうしているんだろう。と、時々思い起こす。
壁のかけらを持っています。土産物屋のではなく。当時住んでいた友と。たまたま旅行に行った人が持ってきてくれて。何か描かれていたのか。少し色もついている。でも。なんとなく飾る気にはならなくて。引き出しに保管?
返信削除fuskさん、こんにちは。
削除そうですね。歴史の証人という意味ではちょっと欲しい気もしましたが、壁そのものが凄く醜い人間の産物ですから、私も飾る気にはなれませんでした。
そんな患者さん達を診たら、壁の前で、観光気分で写真は、撮れないね。
返信削除ベルリンの壁は、一度生で見てみたい。
mさん、こんにちは。
削除そうなんです。病院勤務時代には銃創のある人もかなり沢山診ましたが、特にこの人が話してくれた事は忘れられませんし、話してくれて感謝です。
本当に壁はこんなに薄いのですね。40年程前に東ドイツの人々がカメラの前でいかに自分たちは恵まれているかを語っていた映像を思い出しました。共産党一党独裁が残存している国が世界中にまだあるけど、多くはアシアですね。
返信削除患者さんだった人の件は何だか、、、どう表現すれば良いのわからないです。虚しいです。
cocoさん、こんにちは。
削除日本だって半分こされる案もあった訳で、本当に他人事じゃない、惨い事でした。
旧東ドイツ出身の人で、不自由でも楽しい事もあった思い出を話してくれる人もいるのですが、東ベルリンは本当に大変だったろうなあ・・・と思います。