初めての万年筆は、中学生の誕生日に貰ったもの。うちは、これを貰うのが大人への一歩という感じで、夢に見た位嬉しかったのを覚えている。
最近は手書きする機会がめっきり減り、使わないとすぐにインクが乾いて固まってしまうので、万年筆から離れていた。
でも、大事な書類にサインする時、粗品のボールペンというのがいつも気が引けて、万年筆の方がやっぱり格好がつく。それで久しぶりにインクを入れてみようかなと、秋休みに3本ともきちんと洗って乾かしてみた。確かどれも、インクを吸い上げるところが漏れたりして、使いにくくなっていたんだよな。修理・交換が必要なのかどうか、確認してみなくちゃ、と。
3本並べて乾かしていたら、やっぱり美しいなーと、しみじみ。
(右)アメリカ、SHEAFFER。一体型の流線形が惚れ惚れする美しさで、安定していて一番書きやすいと思う。
(中)日本、SAILOR。1911年モデルの復刻版なのかな?どっしりとした太字で、これで原稿用紙のマスを埋めると、如何にも凄いものを書けているような気分になれて、私は「文豪」と呼んでいた。
(左)フランス、WATERMAN。もっと細かい字が書けるのが欲しくて、これを選んだ。
余談になるけれど、日本語とアルファベットでは、書きやすい筆記用具というのが全く違うのよ。
日本語は書きやすいのに、アルファベットで下から上に書く線が引っ掛かってスムーズにいかなかったり。逆にアルファベットは書きやすいのに、日本語はボケボケになってカチッと書けなかったり。
それで3本ともインクを入れてみて、今の気分はSAILORで決定。
SHEAFFERは記憶の中ではもっと太かったのだけれど、今書いてみると意外に線が細かった。と言うか、恐らく昔はもっと細かい字を書いていたんだろうな。書類にサインするのは太目の方が貫録があるのよね。
私は万年筆以外の筆記用具には全く心動かされず、上等なのを貰っても猫に小判で、結局なくしたり壊してしまったり(ごめんなさい・・・)。
そして万年筆が好きと言っても、集めたいとは全く思わない。この3本を使い分けるので、一生いけるわー。
■向田邦子「無名仮名人名簿」(←Amazonリンク)
彼女がパリの万年筆専門店で、縦に試し書きをして咎められた話しが出てくる。滑りがよくやわらかい太字の万年筆が好きだというの、それ、正に、SAILORを選んだ今の私の気分。
最近は専らゲルインキ・ボールペンを使っているのですが、くまさんに倣って万年筆に戻ってみようかな。
返信削除文字によって書きやすい筆記具があると同時に、筆記具が文字を作るというところもありますよね。ドイツの方に手書きの漢字と明朝体の関係がよく分からないと言われたことがあるのですが、毛筆で書くという経験がないとピンと来ないのかもしれません。
melisandさん、こんにちは。
削除使い捨てのものばかり使っていると、やっぱり心が荒んでいたかなと思いました。久しぶりの万年筆、いいですよー。