2022/11/07

不機嫌な17歳とO先生


旅行記を始める前に。




私が昔、非常に尖っていたという話しは何度も書いている。
その被害者の一人が、高校3年生の時のクラス担任のO先生だった。
山岳部の副顧問で一緒に山に登った事もあったし、家族でヨーロッパアルプスに山歩きに行かれた事もあるようなハイカラさもあって、決して「嫌いな先生」というスタートではなかったので、本当に単なる八つ当たりだったと思う。

ちょっと言い訳をすると、姉達の受験が狂気のようだったので、そんなもんだと思っていた節もある。今思えば、まだまだ子どもで全然甘ったれで、お話しにならなかったけれど、本人は必死のつもり。
ところが、当時は姉達はもう全員家を出てしまって、父は単身赴任で、私は母と二人暮らしをしていた。姉達の狂気の時に母がこっそり泣いているのを見ていたし、母は丁度キャリアアップの最中で私が気を付けていないと食事を忘れてはひっくり返る始末で、だから家では狂い切れなかった部分もあった。そういうのを外で発散していたのかという気もする。

当時の私は古文漢文の先生に傾倒しており、その先生のテストで満点を取りたくて死にもの狂いになっていた。ところが、どんなに完璧に準備しても、どうしてもどうしても満点を取らせて貰えない(そういう風にテストを作っていたのだと、卒業後に聞いた)。涙が滲む程、地団駄を踏む程、悔しい。他の教科は碌に勉強していないから、成績が悪くても何とも思わない。でも国語は、確か偏差値91まで取ったけれど、満点じゃなければ意味がなかったのだ。

各教科担任からテストが返された後、総合成績表は担任の先生から手渡される。口惜しさと惨めさでおかしくなっているところに、O先生が気を遣って、成績表を配る手を止めては、「イケダー、この国語は凄いなー」などと心を込めてしみじみ言ってくれて、それが私の神経を逆なでする。優しい先生だったのをよい事に、「こんな点数、欲しければくれてやります!」という暴言を吐いた事まであるのを覚えている。そこで怒りもせず、しょぼーんと黙ってしまうような先生だったので、私はつけ上がり放題。酷いね。
保護者面談の時に、先生が母に「生徒の心が解らないのです」と嘆いておられたそうで、今思えばまあ、何という甘ったれた八つ当たりをしたのだろうと、身の置き所もない感じ。

センター試験で失敗してショックだった私は、高校で皆で自己採点をして志望校評価を出して貰える用紙を、空欄のままで出した。戻ってきたそれを配るO先生が、空欄を見て「イケダー、これ・・・」と言葉を失ったのが、今でも耳に残っている。

O先生は世界史の先生で、フランス革命の時に「ラ・マルセイエーズ」を朗々と歌われた。普段の先生からは思いもよらぬ余りの激変に、生徒一同ぽかーんと呆気にとられていた感じ。
ポケットからサッと出した音叉を耳に当てて「Hmmm...」と音取りをされている様子は、今でも目にも耳にも焼き付いている。

退職後にシャンソン歌手になられたという事は、風の便りに聞いており、自分が最低の生徒だったので、あんなサンドバッグにならされた後の第二の人生、是非満喫して頂きたいものだと思った。
そして最近、YouTubeで先生を見つけ、こんな繊細な人に対して私は何という事をしていたのだろうと、改めて恥じた。

若気の至りの黒歴史はいっぱいあるのだけれど、そういうのを許容してくれた周りの大人達のお陰で、今の私がある。それがなかったら、壊れてしまっていたかも知れないと思う。
O先生はじめ当時の皆様、ごめんなさい。ありがとう。





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8 件のコメント:

  1. くまさんの10代後半は、尖っていたんだね。
    心が疲れそうだね。私は、のんびりとしていたなぁ。
    満点じゃなければ意味がない!ってスゴイね。
    赤点取らなければイイじゃんって、当時は思っていたよ。
    今は、立派なお医者さん、しかも、開業医!ブラヴォー。

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    1. mさん、こんにちは。
      姉達がペロッと満点を取ってしまう人達だったので、劣等感で凄くもがいていました。入学した直後に私に面と向かって「お前が妹か。大した事ないな、はは」と言った先生もいたんですよー。

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  2. ひかり8/11/22 01:13

    …おおお、この眼差しよ… 尖がっておりましたなあ…
    誰でもいつか大なり小なり…
    順繰りだしねえ。
    まあ、せめて周りの人を大切に、受け入れて貰った恩は
    周りに返すしかないですわね… 既にやっているじゃないですか、くまさん。
    …しっかし、偏差値91まであるんだ~と
    別のところで感心(笑)
    標準偏差だから5%引いて95までとかあるのだろうけど、そんな数字取った人、見たことない~

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    1. ひかりさん、こんにちは。
      兄こぐまが荒れていた時、サンドバッグになりながら「ああ、あの時のツケが回って来たわー」と思いました。
      でも、その時に「それは、何を言ってもくまさんには見捨てられないと信用しているからだよ」と言われて、凄く楽になったの。で、自分の事を思い起こして、ああ、私も選んで八つ当たりしていたんだなあ・・・と。

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  3. ありますよねえ、黒歴史(しみじみ)。わたしも付き合って下さった皆様には感謝しないとと思っています。

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    1. melisandさん、こんにちは。
      おお、melisandさんにもありますか。自分を振り返ると、若気の至りって本当に恐ろしい・・・ブルブル。

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  4. くまさんの10代、かっこいい。勉強にしても尖り方や感情表現にしても、中途半端ではなく、全力で体当りされてきたところが羨ましくもあります♪ 卒業後、O先生に会いに行かれたのかなー。今のくまさんを見たら、O先生、感動されますね!!

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    1. papricaさん、こんにちは。
      残念ながら許して貰えないみたいー。
      と言うか、謝れば許して貰えるような程度じゃない、返事できない位のトラウマを作ってしまったのかも。覆水盆に返らずです。うう。

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