もう何度も書いているけれど、うちの地域は元気なお年寄りが多い。そのうえ医師不足。
なので、家庭医なしにずっと生きてきて、寝たきりや看取り期になって初めて、大慌てで家庭医を探すというパターンが結構あって、「断られまくって、どこも引き受けてくれない」という人の家族が、私のところに辿り着く。
そりゃ、断るのも判る。看取り専門にやっているとまた別だけれど、家庭医としての往診というのは、全く割に合わない仕事。なので、そもそも「往診はしない」という家庭医も少なくないし、私も極力避けるようにしている。
普段の仕事だけでも既に収まり切らずに溢れているのに、そこに看取りの往診ー?自分の患者さんの最期なら仕方がない、頑張って押し込むけれど、新規でそれ「だけ」なんて・・・何でもっと早く来ないのよ。
まあ、そうなるよね。
でも、家で看取って貰えるなんて、素晴らしい。
それをしてあげたいという家族の尊い心を無駄にしたくない。
なので私は、取り敢えず話しを聞くだけのつもりだったのに、結局引き受けてしまう事が多い。
私は医学部在学中の6年間、老年科の病棟で看護助手のバイトをしていた。看護師さんの下働きだから、もの凄い汚れ仕事・力仕事のみ(こちらのお年寄りは重い人が多いのだ・・・)。
でも、その経験が今に凄く活きていて、有難い。
懐手をしないので、「こんなお医者さん、見た事ない!」と目を丸くされる事が結構あって、あの苦労もした甲斐があったというもの。
また、四半期締め日でした。これで2年半。患者番号は、もうこの村の総人口を超えている。
「ただの診察とか簡単な器機だけでも、こんなに見つけられるものなんだ!」「健診ちゃんとやってよかった!」と手応えを感じる事が、最近続いた。「家庭医というのは予防医学・早期発見が肝」というのを、つくづく身に染みて感じる。
一件など、健診で直腸触診をして一旦帰したものの、後から何となく気になって、患者さんに「やっぱり念のために一度〇〇科に行って診て貰って」と電話したら、そこで癌が見つかった。その前年の健診では気にならなかったので、多分初期の筈。
直腸触診なんて、される側の気持ちを考えると、する側にだって迷いがあったのだけれど、これで「よし、続けよう」と吹っ切れた。
勿論、上手くいった事ばかりではなく、「あそこでもう一押ししておけば、もうちょっとスムーズに行ったのにな」という事もあって、そういう反省点も心に刻みつつ、引き続きガンバロウ。