開院したのは、2020年4月1日。
コロナ第一波の真っ只中で、国境が閉ざされてイタリアなどからの建築物資が届かなくなり、工務店の人達も「この医院が最後の仕事で、その後は予定なし」という、滑り込みセーフ(と言っても、ドアや一部のランプが未設置の状態でのスタート)だった。 トイレットペーパーはあちこちのお店を回って何とか買えた。FFP2マスクはホームセンターで1枚4.45ユーロとか、耳栓や保護メガネとセットで1枚だけ入っているのとか、金額にビビりながら買い集めた。
規定で各部屋に設置しなければならない消毒液が手に入らなくて、あわや開院できないかという瀬戸際だったのは、話しを聞いた大先輩医師が「買い置き足りるかも」と夜中なのに医院まで確認しに出掛け、すぐに送って下さった。
開業許可というのは期限付きなので、約束した期日よりも大幅に遅れると色々と面倒な手続きが必要だし、最悪の場合は申請し直しとか助成金の取り消しとかにもなり兼ねなくて、本当に肝を冷やした。
患者数ゼロからのスタートだったので、首の皮一枚で繋がるような綱渡りが続き、生きた心地がせず、胃はキリキリ、心は壊れそう。そんな中で、兎に角最初の3年を持ち堪えるのが目標だった。というのは、ローンの支払いが始まり、税金の後払いが済み、税金の前払いが始まっているのが3年後位の計算だったので。 銀行口座が初めてちらっとプラスになったのが、1年後。すぐにまたマイナスに戻ったけどね。 軌道に載った、もう大丈夫、と言われたのが、2年後。 そしてこの度、目標だった3年を迎えました。
恒例、締め日のお疲れ様ごはん。私のは春の特別メニューで、豚ヒレ肉のハーブソース。
メッセで買った椅子も届いて活躍しているよ。座ると折り畳みナイフみたいにバネで背もたれと座面が閉じてきて、腰をしっかり支えてくれるので、しょっちゅう立ったり座ったりしても、自動的に正しく座れる仕組み。 これになってから1日たりとも腰痛が出ていない!と言われて、奮発した甲斐があったというもの。
こんな感じ。長時間座りっ放しの人より、頻繁に立ったり座ったりする人に凄くいいと思う。
目標だった3年目の締め日を迎え、無事に仕事が済んだら疲れがどっと出て、立っていられない位へろへろになってしまった。
飛ぶように過ぎた日々だったけれど、振り返ればもう大昔の事みたいで、これでもかこれでもかと色々な事があって、本当に本当に長かった。
少しでもマイナスを増やさないよう開業直前ギリギリまで勤務し、夜勤当直明けの休みにアポのはしごをし、今のうちにと研修もあちこちで受け、当時は完全なるワンオペで家族が寝静まった深夜に家事をし・・・最低体重を記録し、不整脈も酷く。開院後、これでやっと家庭も落ち着いたかと思っていたら、また大きな一山があり。今思い起こすだけで、フラッシュバックで涙が滲んでしまう位の苦しさだった。
皆さまの愛に助けられ支えられ、ここまで来られました。
心から、ありがとう。
私はこのドラマも映画も観ていないけれど、銀の龍はメスの事でもあるんだって。一緒に歌っていると歌詞が心に刺さり、こみ上げてくるものがある。