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よその国、特にEU外で医学を修めてからドイツで口述試験や面接を受ける場合は、誰か経験者に訓練して貰う事を、絶対にお薦めする。
あとは、ぬいぐるみ相手とかでもいいので、説明の自主練習。
外国では、認可されている薬もその用量も医療福祉体制も違ったりするので、外国からの資格書き換えの試験では、知識に関してもかなり厳しく見られるのは仕方がない。
更に、仕事させて貰えるとなれば、少なくとも本国人と同じように使えなければならない訳で、つまり議論とかになってもやり合える、少なくとも自分の考えの根拠を同僚や上司にきちんと説明できたり、患者さんに解りやすく嚙み砕いて説明できたり、という言語能力があるかどうかも大切。医者という職業上、信頼できる関係を築くためのコミュニケーション能力は、とても重視されるのだ。
特に専門医ともなれば、自分で開業したり、上級医になったりもできる訳で、責任が重くなる分、それを背負ってチームを率いていく知識とコミュニケーション能力が必要になる。
余談になるけれど、人手不足以外の理由で就労ビザを得るという事は、基本的に「本国人では補えない能力があって、だからわざわざ外国人のあなたを雇いたい」という根拠、つまり本国人以上の能力が必要。
しかもドイツでは、日本の初期研修に当たる部分は在学中に大体済ませているので、就職した初日から病棟を任せられる事が求められる。給料を貰うとは、そういう事。
ドイツの医学部では、兎に角口述試験が多い。毎週のようにある月もあった。
試験官は容赦なく問い詰めてくるし、勿論何度でも落としまくられる。
化学実験中に、学生の肩を後ろからツンツンとやって連れ出しては試問する教授とか、口述試験中に必死に答えを述べるのをじーっと訊いていて、一言「それ、確かかね?」と言って、焦って自爆させる教授とか、色々いたわ。
初めての口述試験では、待ち時間に緊張の余り泣き出してしまう子も続出だったのが、6年もそれが続けば、流石に皆鍛えられてくる。
医者になればなったで、先輩医師のマシンガントークについていかなくてはならず、新人はブルブル緊張しながら口を挟む隙を探し、隙間を空けるとまた他の人に口を挟まれるし、話し方が要領を得なければ時間のない相手に苛々されるので、筋道を立てて要点だけ一気にまくしたてる。
そうやって鍛えられたのが、ドイツの医者の普通のレベルなので、ドイツの試験官はそういう基準で見ている。
私は一度だけ、口述試験で落とされた事がある。2年生の時で、「よく勉強してあるけれど、言葉のうえで、それでは国家試験に通用しない」という理由で。
その時は凄く憤慨したし、同級生たちも大騒ぎしてくれたけれど、今になると、やっぱりその先生は正しかったのだと思う。
2年生になってちょっと試験慣れしてきて、「外国人にしてはよくやっている」と見せる妙な誤魔化し方が、きっと無意識のうちに入ってきていたのだろう。そういう甘えや狡さのようなものがちらりとでも見えたら、もう許されないと思った方がいい。
あと、医者に限らず、自分の話している様子をビデオに撮って観察するのはとても大事。私は医学部後半に、一般留学生向けのプレゼンテーション講座に通った事があり、自分のプレゼンテーションの録画に愕然とした。
日本人の自動的な営業スマイルは、場合によっては全くそぐわない。へらへらして不真面目に見えるのだ。特に失敗した時の照れ笑いは絶対にいけない。真剣な話しをしている時は、真剣な顔を。これ、もう、ガツーンと身に染みた。
口述試験にもテクニックがある。
口述試験というのは、「時間内にどれだけ自分の知識を披露したか」「どれだけ試験官を納得させられるか」で勝敗が決まるので、訊かれた事に答えるだけではなく、求められている答え以上に話す。つまり「はい、もう結構」と試験官が遮ってくるまで、なるべく早口で答えを詰め込む。
ぽつんと答えたのでは、物足りないので試験官は掘り下げてくるけれど、相手主導で細部を追求されていくのでは、自分の答えられない部分に当たるかも知れない。なので、訊かれた事以上に勝手に掘り下げ、「お、そんな事まで知ってるの?」と試験官が思ってくれる位、詳細に渡って喋りまくる。
特に一番最初は凄く大まかな質問で「小手調べ」が来るので、最大のチャンス。そこで如何に流暢に細部まで答え、自分の知識を披露するかで、その後の試験の流れが決まる事が多い。
例えば、「〇〇にはA、B、Cがあります」で終わるのではなく、「〇〇にはA、B、Cがあって、Aの中のA-1、A-2、A-3、A-4の違いはこうこうで、A-1の治療法は・・・」と、自分の得意な部分を勝手に語る。
緊張の余り答えが出てこなくなってしまった場合も、黙り込んでぐるぐる考えるのではなく、「〇〇はこういう理由で違うし、××はあっちだし・・・」と考えている内容の根拠を口に出していくと、ちゃっかり他の知識も披露できるし、試験官も納得してくれる。
また、究極の部分を言ってしまえば、正解というのは調べれば判る事なので、必ずしも全ての詳細を暗記できていなくても、医者としては構わない。
ただ、正解に辿り着くための過程や理由、考えの道筋とか、「ここは要注意」とか、そういうものはとても重要。
因みに、国家試験や専門医試験など、大きな口述試験は必ず複数の試験官に囲まれる。これは、口述試験というのはとても主観的なものになるので、一人の試験官と相性が合わなくても他の試験官との部分で救われたりするし、試験の後は試験官同士で話し合って評価を決めるようになっているのだ。
当時はまだ医師不足じゃなかったので、新卒の就職活動はかなり苦戦した。
面接に関して経験者から貰ったアドバイスは、「いきなり本命を受けてはダメ。まず、どうでもいいところを受けなさい」という事。確かに、その通り!と思う。
あと、面接に行くための往復交通費は、面接先に請求する事ができるし、志望書のための写真や郵送費などの諸費用は、税金控除に使えるよ。
関連過去記事:
■「ドイツの医者に必要な『読む力』」(←筆記試験についてはこちら)
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